キッチンリフォームにまつわる数々の資格
株高経営が蔓延するとR&D(技術開発)の費用数年してから、このサミットに携わったと思われる元外交官が、あれはアメリカの陰謀だったなどと論じた本を刊行したが、このITサミット前後の経緯はあまりに明らかで、陰謀という名に値しないほど明け透けな、ビジネス用の舞台づくりに過ぎなかった。
陰謀というからには、秘密めいたものがなければならないだろう。
技術開発力も低下することは知られていた。
さらに、八○年代から金融経済に傾斜するのと同時期に、アメリカの所得格差が急速に拡大したことも常識だった。
ところが、M&Aが世界的ブームになると、日本政府は世界で最も買収がやりやすいアメリカ型のM&Aルールを策定してしまった。
また、日本でアメリカ型コーポレート・ガバナンスが持て雛されると、その中心を形成している株高経営も称賛されることになった。
八○年代からアメリカの所得格差は縮小したという、米ファイナンス理論家の強引な議論ですら、日本の金融経済学者が持て嚇すという呆れた現象すら起こっている。
私は、こうした現象のひとつひとつに「陰謀」があったなどとはいわない。
しかし、日本の政府官僚、経営者、経済学者そしてマスコミ関係者たちは、あまりにアメリカ発の物語に対して抵抗力がなく、容易に「感染」してしまう傾向があることは否定できない。
これほど簡単に感染するならば、政治的工作はきわめてスムーズに行なわれるだろう。
アメリカで蔓延した物語は、すぐに日本でも物語として語られるようになる。
IT革命は素晴らしい未来をもたらし、金融工学は日本の経済を塗り替え、日本国民を幸福にするというわけである。
実は、住宅ブーム物語にも、後に述べるように日本はすでに感染していた。
二つの「感染」にどう立ち向かう力東アジア諸国は、九○年代前半にはバブル的な経済繁栄を享受していたが、決して経済のファンダメンタルズは悪くなかった。
貯蓄率が高いおかげで資金は国内に存在していたし、財政も黒字で問題はなかった。
ただ、輸出に依存する体質だったので、自国の通貨をドルに固定する「ドル・ペッグ」を採用していたことが、後の被害を大きくした。
金融危機が起こる直前の東アジア諸国に共通していたのは、急速に海外からの短期資金が流入して、地域銀行によって国内通貨に転換され、地元の企業に融資されていたことだった。
さて、もうひとつの感染である「金融的感染」についても考えてみよう。
この十余年の間にコンティジョン(感染)という言葉が頻繁に使われたのは、九七年、東アジアで金融危機が広がったときだった。
このときはタイのバーツ危機に端を発して、金融危機はインドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、台湾、韓国にまで広がった。
この現象は、あたかも伝染病が急速に広まっていくような様相を呈していたので「感染」とよばれたが、別に「病原菌」があったわけではない。
もし最大の病因をあげるとするなら、IMFと世界銀行が、東アジアにオフショア(国外)金融市場を無理やり立ち上げさせた。
ドル・ペッグで地域銀行が為替リスクを負うこの仕組みは、いったん金融危機が襲うと止めどなくアジア経済を融解させることになった。
まず、タイにおいて景気に陰りが出てきたという情報が流れると、それまで流入していた投資マネーが急激に引き揚げられた。
そのためタイの景気は急速に後退し、地域銀行による融資先への資金が焦げ付いた。
また、通貨のバーツが為替市場で実質的に二分の一にまで下落したので、海外の投機ファンドに対する負債が二倍に拡大するという、ダブルパンチを食って地域銀行は破綻していった。
次に起こった近隣諸国への感染も、このプロセスの繰り返しだった。
タイの景気後退と資金の引き上げを目撃した投機ファンドは、近隣諸国からの資金も引き揚げる。
するとざらにその国の経済が後退し、不良債権が積み上がって金融機関が破綻する。
そして急速に企業への資金が停滞し、あっという問に実体経済も萎縮するに至ったのである。
実は、この当時、東アジア諸国には国内の金融市場が発達していなかったため、為替リスクを回避するためのヘッジをすることができなかった。
為替リスクのヘッジもできない地域に、巨大な金融市場をつくって海外の資金を誘い込むこと自体が間違っていたのだ。
二つの「感染」にどう立ち向かう力サブプライム問題には「病原菌」も存在したこうした東アジアの金融危機と比べると、今回のアメリカを中心とする世界金融危機は、はるかに分かりやすい。
病原体が存在することは明瞭だからだ。
ただし、病原体の感染経路を作っていったのは、世界の隅々まで到達している情報ネットワークと金融ネットワークである。
やや模式的に描くと次のようになる。
まず、世界的な住宅バブルを背景にしてアメリカ全土でも住宅バブルが生まれた。
この住宅バブルを加速したのは住宅ローンを証券化した住宅ローン担保証券(MBS)で、これが住宅という土地に縛り付けられている資産を、金融市場ネットで売買できる投機の対象に転換した。
もちろん、売買の単位が日本円で一億円以上と高額だから、購入するのはアメリカを中心とする世界の金融機関や投資家だった。
M社やF社など、政府系機関が発行するMBSの売買だけでは飽き足らない金融関係者は、低所得者向けの住宅ローンを同じように証券化することを思いつき、変動金利であやういローンを組んだ。
これがサブプライム・ローンである。
もちろん、金利は高いがリスクも高かった。
こうしたMBSの隆盛は、経済マスコミやインターネットを通じて世界に住宅ブームを印象づけた。
さらにアメリカの金融関係者は、こうしたMBSを集めてリスクを組み替えた債務担保証券(CDO)の売買を試みるようになる。
複雑な数学を用いてその組み替えを正当化したが、なんのことはない、自分たちの儲けを多くするための詐術だった。
しかも、なにより危険だったのは、ここにサブプライム・ローンを元にしたMBSも放り込んだことだろう。
こうしたMBSやCDOの取引を行なう金融機関は、何か起こったときのためにさまざまなデリバティブ(金融派生商品)でリスクを回避しようとした。
この金融商品もよいビジネスになったので、信用保証会社や巨大な保険会社が乗り出して、大々的に保証のためのデリバティブを売買し、自分自身も巨大な利益をあげた。
もちろん、ここにも巨大なリスクが張り付いていた。
しかし、情報カスケードによってユーフォリアが蔓延した金融世界の住人には、もはやリスクの判断がつかなくなっていた。
ここまでは今回の金融バブルが拡大するプロセスだが、いったんアメリカの金融機関が扱っていたサブプライム関連のMBSが危Nさん分かると、金融市場は急激に逆転して収縮のプロセスに入った。
エボラ・ウィルスなみの速度で収縮の感染は広がり、そのウィルスがどこにあるのかも分からなかった。
恐怖は情報ネットを通じて世界に感染していった。
MBSが駄目だとなるとCDCが疑われ、CDCが駄目だとなると保険会社のデリバティ二○○八年十二月末に、Tさんの書いた「感染-世界経済を席巻した金融伝染病とその予防』が出版された。
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